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SLE専門医と
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Vol.4

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全身性エリテマトーデス(SLE)専門医と患者さんのダイアローグ SLEによる日常生活への制限と医師との治療目標の共有 聖路加国際病院 Immuno-Rheumatology Center 岡田正人先生 × (仮名)石川理恵さん

2022年3月、オンラインにて取材

石川さんは、小学生のときからだるさや顔の赤みなどが続き、中学1年生でSLE(全身性エリテマトーデス)と診断されました。
現在は症状が落ち着き、ご自身のペースでお仕事もされていますが、再燃を経験したときは大変つらく、
生活や心の状態にも変化があったと言います。
石川さんと、以前の主治医である岡田先生に、SLE患者さんが日常生活で受ける制限や、再燃による影響、
治療目標の共有などについてお話をうかがいました。

SLE患者さんが日常生活で
受ける制限や支障

  • 石川さん:

    “睡眠不足や運動のしすぎ、ストレスが体調に大きく関わっているとわかってきました”

  • 岡田先生:

    “まずは患者さんの全体的な状態を知り、具体的な原因を探ります”

石川さんはSLEによって、日常生活に影響を受けていること、また過去に影響を受けていたことはありますか?

石川現在、SLEの症状は落ち着いていますが、疲れがたまるといつも体の同じ部分に痛みがでてきます。左側の肩や腕は、決まった角度で曲げたり体重をかけると激痛が走ることがあります。他にも、右大腿骨のあたりも痛みがでやすくて動きづらいことがあります。それから常に全身に倦怠感があり、微熱は毎朝感じています。少し頭痛がしたり、目の前がピカピカと光ったり、特に体調が悪いときには起き上がれず瞼が重くて目を開けられないこともあります。つらいですが、がんばって体を起こし、朝食を食べて薬を飲むと、昼頃から夕方には大抵症状は落ち着きます。今は、外見ではわかりにくい症状が多いので困ることが多いです。また、以前は脱毛や皮膚の赤みがある時期もありました。

SLEの症状とうまく付き合っていくために、工夫されていることはありますか?

(仮名)石川理恵さん

石川最近感じるのは、睡眠不足が一番体調に関わっているということです。運動のしすぎやストレスも関係していると思いますね。大変な仕事が続くと、胸のあたりに痛みを感じたり、翌日もまだぐったりしている状態が続きます。心身ともに無理はせず、十分な睡眠を取って休むように心がけています。以前はしんどい時期でも「もう少しできる」とがんばることもありましたが、今はその手前でセーブすることが増えましたね。

(仮名)石川理恵さん

岡田先生、SLEの症状は患者さんによって感じ方が異なるため、他人への伝え方が難しいという方もいらっしゃいます。患者さんの状態を詳しく知るために、工夫されていることはありますか?

岡田私は診察時、まず患者さんに「楽しく過ごしていますか」と質問します。楽しいと答える患者さんは、だるさなどを感じていたとしてもご自身にとって受け入れられる範囲なのだと判断しますが、楽しくないと言う場合、関節痛や強い倦怠感などを訴えられることが多いですね。その原因を探るためまずは炎症などが見られないか、次に睡眠不足や運動不足がないかを調べます。それでも原因がわからない場合は、SLEの症状が長く続くことで精神的な影響を受けているケースを考え、心療内科でのサポートを行うこともあります。こうして原因を明らかにしていくと、患者さんも安心し、倦怠感の軽減にもつながりやすくなります。

  • 石川さん:

    “受診したときに過去の症状を先生に伝えられるように、今起きている症状をメモに残しています”

  • 岡田先生:

    “症状によって、生活上にどのような支障がでているのかを伝えていただきたいです”

聖路加国際病院 Immuno-Rheumatology Center 岡田正人先生

石川さんは、困っている症状について、医師にどのように相談されていますか?

石川気になる症状があっても、その後体調が良くなると忘れてしまうので、スマートフォンのメモに書き込んで、診察時に先生にお伝えしています。簡潔に伝えやすいように箇条書きにすることが多いです。でも、特に体調が悪く、気持ちが乱れているときなどは、いろいろ伝えたいと思うあまり日記のような文章になることもあります。

岡田メモを書くことはおすすめです。石川さんのように箇条書きにして、私たち医師にそれを見せていただけると、その患者さんの聞きたいことがいくつあるのかわかりますし、同じような症状についてはまとめてお答えできます。スムーズに回答できるので、限られた診察時間の中でも患者さんに満足していただけると思います。
そして、患者さんにはぜひ「症状があることで、生活上にどのような支障がでているか」を伝えていただきたいです。症状ももちろん大切ですが、その上で「こういうことがしたいけれど、倦怠感や関節痛があるためにできなくて困っている」と伝えていただくと、どのような治療を行うか選ぶ際に大いに役立ちます。

聖路加国際病院 Immuno-Rheumatology Center 岡田正人先生

ご家族や職場では、ご自身の体調についてどのように伝えていますか?

石川日によって変わる症状、また周囲からは見えない症状を、SLEではない人に理解・共感してもらうのは難しいことです。これまで家族や勤めていた会社でも、さまざまな工夫をしたり、どうしたら伝わるか話し合ったこともありました。以前の勤務先では、その日の体調を1から10の数字で表現する方法が、自分の状態を理解してもらいやすかったですね。

岡田周囲への伝え方は、それぞれの患者さんの社会的背景があるため、会社の理解度などに合わせて行う必要があります。SLEが難病指定の病気であることや、きちんと治療をすれば一般の方と同様の生活が送れること、ただし無理な活動やストレスは再燃につながることなどを伝えておくのが良いでしょう。

再燃に対する不安と生活への影響

  • 岡田先生:

    “再燃が起きたときは、速やかに治療を始めることが重要。
    少しでも気になる症状があれば相談しやすいようにしています”

  • 石川さん:

    “再燃後は、睡眠時間を増やすなど、なるべく「省エネ」を心がけるようになりました”

石川さんは、再燃を経験して、日常生活や心に変化はありましたか?

石川再燃したとき、症状がとてもつらかったことと、病気のせいで自分が思うように仕事ができない焦りや悔しさがあり、当時診ていただいていた先生に薬の増量をお願いしました。気持ちが不安定な時期で、再燃の症状を抑えるためではなく、もっと働くために薬の増量をお願いしたことで、先生にはご心配をおかけしたと思います。その後は、睡眠時間を増やしたり、なるべく「省エネ」を心がけて過ごすようにしたりなど工夫しました。また、日中は日焼け止めをこまめに塗り直すようになりました。

岡田先生、再燃が起きた時の治療や患者さんとのコミュニケーションについて教えてください。

岡田再燃であらわれる症状は、多くの場合、その患者さんがもともと持っていたものです。腎臓や皮膚の炎症、脱毛など患者さんによって異なります。治療を始めてから初期はどうしても再燃を起こしやすいのですが、繰り返す中で、患者さんも原因に見当が付いてきます。石川さんの場合は、寝不足やストレスなどですね。原因がわかると、予防を心がけるようになります。
もし再燃が起きた場合は、速やかに治療を始めることが重要です。症状が軽いうちであれば、短期間かつ比較的簡単な治療で症状が落ち着きます。そのためにも、患者さんと密にコミュニケーションを図り、少しでも心配なことがあればすぐに病院に連絡したり来院したりできるよう、普段から配慮しています。

治療目標と患者さんとの
コミュニケーション

  • 岡田先生:

    “治療目標は、あくまで「普通の生活を送る」こと。
    病気を理由に、人生の目標や計画を変えないようにしたい”

  • 石川さん:

    “納得して治療に取り組むために、患者としても、治療選択に関わることは重要だと考えます”

石川さん、治療目標について医師と相談されますか?

石川はい、よく相談します。以前、比較的ハードに仕事をしていたときは、なんとか仕事を続けていきたいことについて相談していました。現在は、将来的に妊娠を希望していることについてが中心ですが、こうした希望に合わせて薬を変えていただくこともあります。

岡田患者さんからもっとも相談が多いのは、妊娠についてです。母体への負担を考慮すると、できるだけ早い妊娠・出産が望ましく、その後の治療の上でも良いと考えます。また仕事を続けたいと希望する患者さんも数多くいらっしゃいます。このような希望や悩みに合わせて、飲み薬や注射といったお薬の種類や、1日の服用回数について患者さんと相談します。治療目標というのは、あくまで「普通の生活を送る」ことで、患者さんがどのような生活をしたいかに沿って治療を選択します。患者さんが、病気を理由に人生の目標や計画をできるだけ変えなくても良い状態をめざすのです。

石川以前は先生の他、看護師さんにもよく話を聞いてもらっていました。診察時に緊張したり、先生がお忙しそうで遠慮することがありましたが、看護師さんが診察の前に話を聞いてくれたときは女性同士ということもあって、相談しやすかったです。

岡田最近は注射の際に、患者さんと看護師が話す時間が増えたと思います。さまざまな職種で情報を共有して、チーム医療で患者さんをサポートしていきたいですね。

岡田先生、現在SLEの治療に対して、患者さんはどのように関わっておられますか?

岡田例えばお薬については、患者さんもよく勉強されて、新しいお薬に関する質問を受けることもあります。現在はSDM(shared decision making=共同意思決定)という考え方も進んでいて、患者さんの背景や希望も聞きながら、選択肢を挙げて一緒に選択していくことが多いです。

石川患者として、自分で治療方法を選ぶことは、納得して治療に取り組めるという点で、とても大事だと思います。新しいお薬も、もし自分に合うのであれば、積極的に試していきたいです。将来的に、SLEが完治する時代がくればと願っています。

岡田10年前と比べて、SLE治療は大きく進歩しました。今は多くの選択肢があるので、患者さんにも、お薬をはじめとする治療やご自身が望む生活について、積極的に担当医師と相談してほしいですね。そして、社会全体の理解や協力も重要です。まずはSLEについて正しく理解してもらい、SLE患者さんが必要なサポートをしっかり受けられるようになればと考えています。

石川SLEという病気の社会的認知がもっと高まれば、患者さんの悩みもずいぶん軽減されるはずです。SLEの症状はとても幅広く、不安を感じることも多々あるので、他の患者さんの情報を知ることで心強く思うこともあります。
私自身、SLE患者さんに「一人じゃない」と知ってほしいという思いがあり、機会があれば自分の経験を積極的に伝えるようにしています。今、大好きなお花の仕事に携わっていますが、自分の心や体と上手に付き合うために見つけてきた工夫を活かし、今後環境が変わっても、自分のペースで楽しみながら毎日の生活や仕事を続けていきたいです。

本日は、ありがとうございました。

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